広報誌第5号[2020年8月]

インタビュー 医師/羽田 勝征

インタビュー 医師/羽田 勝征 「何が大切か」を見極める。

自分の身内だったらどうするか?

私は愛媛県松山市で6人兄弟の5番目として生まれました。

医療とは全く無縁の家庭でしたが小学生の時、母は胃がんで父は結核で相次いで他界しました。

当時意識することはありませんでしたが、高校生になり周りが見えてくると、兄や姉に対する感謝と「両親が生きていれば」と思い、命を救う医療に興味を持ちました。
そして、高校3年の進路指導の際におそるおそる医師になりたいと希望を述べたところ、先生に後押しをされて医学部にチャレンジすることにしたのです。

周りの支えもあり何とか合格し、合格後も患者と関わる医療を目指し、主に神経内科や循環器内科の診断学に関心を持っておりました。
医局へ入局後はアメリカノースカロライナ大学に留学し、心エコー(心臓超音波検査)の知見を深め、早期診断と早期治療に貢献する道を進んできました。
日本への帰国後は大学病院で臨床研究に従事し、その後はJR東京総合病院で定年まで勤め、7年ほど前に医局の先輩に誘われ静風荘病院の外来でお手伝いをすることになりました。

地域の患者さんとの関わり合いの中で強く意識するようになったのは「何が患者さんにとって大切なのか」です。
大学病院のようにお互い切磋琢磨することも重要ですが、まずは患者さんに聞くことが必要不可欠です。
また患者さんを設備の整った病院に紹介する際も報告をしっかりして頂ける病院は安心して任せることができ、信頼関係はこうした相互の関わり合いの中で生まれるものだと改めて感じております。

今後も「自分の身内だったらどうするか?」この言葉を忘れず、この地域に貢献できれば幸いです。

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すまいる通信

今回のテーマ 心エコー(心臓超音波検査)

心臓の動き、形状、血流など体の中を可視化

心エコー(心臓超音波検査)は超音波を照射し、心臓の動きや血液の流れを体表から観察する検査です。
心電図と同様、安静臥床で施行される検査で時間は少しかかりますが、レントゲンのような被爆がなく、聴診器では見えない生体内の動きをリアルタイムに観察することができます。
心臓は2次元で表示されますが、3次元的に把握し、心筋と血流の動きから様々な心疾患の診断を行うことができ「第2の聴診器」と呼ばれています。

心エコー検査の観察画面
心エコー検査の観察画面
「新・心エコーの読み方、考え方」の著者でもある羽田先生
「新・心エコーの読み方、考え方」の著者でもある羽田先生

安全かつ有用である一方、知識と経験が必要

心エコー検査はすべての心疾患が検査対象となります。
観察画面では構造物は白黒の濃淡で、血流はカラーで表示されるため、その読影には知識と経験が必要です。
「心不全としては心拍数が速くない」、「息切れが強い割には心電図変化が乏しい」、「雑音があるので虚血性心疾患とは思えない」など、生体は不確実性の塊であることを念頭に置き、注意深い診察と検査にて確定診断に迫ります。

心臓に何らかの病気があって起こる症状の総称 心不全

心臓のポンプ機能の破綻により血液を全身に送り出す力が低下して息切れ、動悸、倦怠感、下肢浮腫、などが出現する状態を言います。
病名ではなく、心臓に何らかの病気があって起こる症状の総称です。

原因

心臓機能低下の原因には冠動脈疾患(動脈硬化による狭心症・心筋梗塞)、不整脈、高血圧、弁膜症、心筋疾患、先天性心疾患、心膜疾患、極めて稀な感染症、などたくさんあります。
息切れや動悸は心臓以外でも風邪などの呼吸器疾患、腎臓病、発熱、貧血、肥満、筋力低下、仕事疲れ、精神的緊張、等でもみられることがあります。

以上の症状があれば必ず受診してください。
原因と重症度により治療方針が異なるので心臓由来であることの確認のために検査が必要です。

症状

健康な心臓は労作ではポンプ機能(血液を駆出する力)を良くして、心拍数を増やして全身にくまなく栄養と酸素を供給できるのですが、心臓に病気があると血液が十分に駆出されないだけでなく、全身からの血液を十分に受け入れることができず、内臓臓器に水分が貯留してきます(うっ血と言います)。
心不全のごく初期では歩行、労作(坂道、階段、荷物運搬)などで息切れや動悸が生じ、安静で消失するのが特徴ですが、進んでくると安静時も出現するようになり、下肢に浮腫や肺に水が貯まり息切れが進行します。
したがって、労作でなく、安静時のみの動機や息切れ感は不整脈や精神的・心因的緊張によることが多く、心不全の可能性は少なくなります。

心不全の初期の症状はいつもの労作、階段、坂道、家事がつらくなった、労作で胸痛がおこる、安静でも脈が速くなった、脈が乱れる、下肢のむくみがある、体重が増えた、食欲がなくなった、疲れやすくなった、などです。
症状を聞くことはきわめて大切です。
ご高齢ですと自分で年のせいと考えて、無意識に生活や労作を制限しているために自覚症状を感じない人がいます。
息切れのために数年、二階に上らなくなった心疾患の人、一緒に歩いている奥様に最近、歩行のペースが落ちて来たと指摘され、心不全が見つかった人、もいます。

多くは慢性心不全ですが、以上の症状が比較的急に起これば急性心不全と言われます。

病歴の聴取と診察

初めての症状で受診される方もおられますが、依然から病気があり薬を服用している、検診で異常を指摘されたことがある、などは重要な情報です。
高血圧がある、心雑音がある、心筋梗塞や心不全で入院したことがある、などで原因の方向性を絞ることができるからです。
息切れがあって下肢に浮腫があれば心不全の可能性が高くなります。
外来で話を聞いただけで心不全らしい、心不全らしくはない、という判断をすることもありますが、多くは検査して確定診断することになります。

症状だけでなく、それにより生活制限をきたしているかどうかも重要な情報です。
既往・現病歴の聴取、視診による浮腫や聴診だけで心不全を疑うこともできるので診察は不可欠です。
治療方針の決定だけでなく、治療効果の判定にもどのような日常生活を送っているかを聞いておくことは重要です。

検査・診断・治療

心不全の確定診断と重症度、基礎疾患を確かめるためには検査は必須です。
胸部X線写真で心拡大や肺うっ血(水分の貯留)の有無を、心電図では心筋梗塞、心肥大、不整脈の有無を見ます。
また、心エコー検査は心筋梗塞、弁膜症、先天性心疾患、心拡大・心筋肥厚の判定や心機能評価が可能なので、以上の三つの検査は心不全の診断には必ず行います。
そのほか血液・尿検査も必須で、心不全の指標の他、心筋梗塞・狭心症、貧血、腎障害、肝障害、脂質異常、糖尿病、等の有無は必ずチェックします。

基礎疾患によっては、あるいは中等度以上の心不全では確定診断や治療のために入院になります。
とくに冠動脈疾患に対してはカテーテルによる診断と治療を行うので、ときには緊急入院となります。

普段の生活での注意事項

当初は生活制限と安静です。
当然、内服(強心剤、利尿剤、降圧剤、心臓の負担をとる血管拡張薬、抗不整脈剤、抗脂血薬など)、体重の是正、水分・塩分の制限は必須です。
利尿剤で尿量が増えれば楽になります。
高血圧、肥満、脂質異常、糖尿病は動脈硬化や心不全の促進因子です。
浮腫だけでも数Kgは増加することがあるので定期的に体重を測定して健康時の体重を維持しなければなりません。
定期的検査は必ず受けて下さい。
心不全は治癒する病気ではありません。
小さい悪化と改善をくりかえしつつ進行して行く病気です。
進行の度合いは病気の種類や重症度により様々です。
薬で高血圧や高コレステロールが治るわけではありません。
内服でコントロールしているだけです。
改善したので飲まなくていいわけではありません。
中止して悪化する人はたくさんいます。
過激な運動は禁止されます。
治療とともに日常生活の制限は取れてきます。
定期的通院で主治医と話し合って決める問題でしょう。

著:羽田 勝征

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